Kawasakiのバイク欲しい

バイクが欲しい。ただそれだけ。

至高の走りを邪魔する 「「ヤツ」」

 日曜の朝には似合わないスーツを羽織った俺は駅の改札を抜けた。朝の柔らかな日差しに照らされた道をお出かけに浮かれた恋人や、楽しそうに手を繋ぐ家族連れやらが時間を噛み締めるかの様に歩いていた。そんな幸せそうな人々を横目に俺は目的の場所へと足を急がせた。ふと目をやると道路脇に彼は止まっていた。ビルが建ち並び、夜には高級外車なんかが行き交うそんな街に。

 彼は全身をメーカー物のヘルメットやジャケットに身を包んでいた。彼からは仕事のうっぷんを晴らしにいくぞ!!!俺はこの日の為に一週間頑張って来たんだ!!!なんて台詞が聞こえた気がした。彼のバイクはボディに落ち着いた黒を使い、ホイール、ステッカーなど細かいパーツに金をちりばめた、大人の格好よさが漂うH社のバイクだった。

 

 だがこれから走りにいく彼の横には不釣り合いな自転車が止まっていた。俺の目にはあの2人が今から一緒に出かける連れ同士には見えなかった。自転車に乗った「ヤツ」は自転車に乗る時の正装なのだろうか青っぽいユニフォームの様な服を着ていた。自転車のサドルを机代わりにして何やら書類の用な物を書いていた。書類を書くヤツの手は止まる事無く動き続け、これまでに何度もその作業を繰り返し行っている事を容易に想像させた。

 2人が一緒に出かけるのでないのならば、おそらく彼はヤツに捕まったのだ。誰が見てもヤツの方が立場が上だった。2人のやり取りを見ながら歩いていたらいつの間にかすぐ横にまで来ていた。通りすがりに見えた書類を書くヤツの姿を固唾をのんで見つめていた彼はどこか悔しそうな、寂しそうな、数分前には考えもしなかったであろう虚無感に抱かれた様に見えた。

 

 彼とヤツのやり取りが終えるのを見届ける事無く俺は大通りヘと向けてT字路を曲がった。彼がどうしてヤツに捕まったのかなんて俺には知る由もない。他人の時間とは関係なく今日も自分だけに流れる時間が始まる。8.5時間と言う途方も無く長く感じる時間が。

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜日にバイクがチャリンコ警官に捕まっている所を小説風に書いてみました。ww

 

 それでは。

 

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